第11回:今こそ生き残りをかけてSDGsを真剣に考える時①

新型コロナの感染拡大を防ぐため緊急事態宣言が各地に発令されいます。この事態を乗り越えてこれからのニューノーマルな時代を迎えるにためには地域や企業そして人として今でこそSDGsを踏まえて生き残りをかけた活動が必要です。SDGsの漠然としたイメージは、一般的にロゴで認知されるようなってきましたが実際にどのような活動を行っていくかについては、まだ認識されていないのが実情です。そこで今回から数回に分けてSDGsの基本的なことからビジネスを行う上で考えなければならないことを述べて行きたいと思います。最後にSDGsの基本とケーススタディをイーラーニングで提供しておりますので合わせてご紹介します。

 

SDGsの成り立ちと意義

SDGsができるまでの経緯としては、1990年代から各種の国際開発目標について議論され、さまざまな活動が行われてきました。2000年には国連ミレニアム宣言、SDGsの前身となるMDGsミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)が発展途上国向けの開発目標として貧困・飢餓、初など教育、女性、乳幼児、妊産婦、疾病、環境、連帯の8つが2015年を期限とする目標として設定されました。その活動と実績を踏まえて2015年に2030年までに17の目標を達成するSDGsが国連によって採択されました。これは発展途上国のみならず先進国を含めた全ての人が参画することが特徴です。

 

SDGsのグローバル目標、ターゲット、指標

意義としてSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、国連加盟国と多様な組織、人々によって、「17のグローバル目標の下に、169のターゲット(達成基準)と、それらに対応した232の指標」などからなる国連で採択されたグローバルな開発目標のことです。2015年9月の国連総会で採択された『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)』では、国際社会全体が人間活動に伴い引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し、協働して解決に向けて取り組んでいく決意を表明した画期的な合意です。このアジェンダの一部として、グローバル目標やターゲットなどが提示されています。

それでは、17のグローバル目標のうち例として目標12「作る責任 使う責任」を取り上げてみます。これは持続可能な消費と生産のパターンを確保することを意味します。

グローバル目標に対していくつかのターゲットが定められいますが、目標12では12のターゲットがありその実施手段が記載されています。例えば、食品ロス削減SDGsであれば12.3の2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。着地型観光による地方創生SDGsであれば、12.b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入するなどです。このターゲットはSDGsに定められたグローバル指標と各国や地域で検討がなされて定められたローカル指標があります。例えば先程の目標12のうちターゲットを12.3の「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」とした場合は、グローバル指標はグローバル食品ロス指数(GFLI)を用います。

このように共通のルールを決めることにより、行動指針が立てやすく誰がみても理解可能なものとなっています。

 

SDGs経営のビジネスチャンス

1990年代からCSR(企業の社会的責任)と言う事が提言されて2006年頃からESG(環境、社会、ガバナンス)が決議されました。その間の2000年には前述のMDGs(ミレニアム開発目標)が掲げられました。CSR,ESGの流れを受けて2011年からは経済的価値と社会的価値を両立するCSV(共有価値)と言う概念がうまれ、このような背景を受けてSDGsが2015年9月に国連によって決議されました。

SDGs経営が役立つ理由として環境省は、中小企業向けに「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイドを制作し、長期的な視点で経営の持続可能性を実現するツールがSDGsであるとしました。SDGsの活用によって期待できる4つのポイントとして①企業の社会貢献イメージの向上②社会問題の課題解決への対応③生存戦略になる(長期的存続企業)④新たな事業機会の創出を提言しています。

  • 企業の社会貢献イメージの向上

これまで「わが社の○○事業によって社会貢献する」と表明しても、聞き手には具体性を欠いていて、曖昧に受け取られていたかもしれません。SDGsでは、「今、そして未来に世界が抱える問題」を国連が選び、その課題解決が「地球、環境、社会、人類に極めて重要」として国際社会が目標を定めたものですので、その課題解決につながるように、「わが社の、○○事業」を、SDGsの目標とターゲットに具体的に対応させることで、国連の目標にマッチングした社会貢献といえます。これにより金融機関、取引先、ステークホルダー、消費者、そして学生にも、自社の社会貢献企業のイメージを伝えやすくなります。

  • 「社会問題の課題解決への対応」のチェックリスト

SDGsは国連の目標ですが、「社会が企業に求めていること」と置き換えて読むことができます。別の言い方をすると、SDGsの17の目標と169のターゲットは、将来、経営のリスクと機会を確認できるチェックリストとして活用できます。SDGsには、ESGの視点から、経済・社会・環境のほとんどすべての課題が網羅されているので、未来志向の課題解決の需要を裏づけるヒント集とも言えます。例えば、SDGs目標8「働きがいも 経済成長も:働きがいのある人間らしい仕事」は、働き方改革、健康経営、女性社員の活躍の課題であり、対応しないと優秀な人材は確保できません。その他にも、地球温暖化対策、廃棄物削減など、社会からの対応が迫られています。

  • 生存戦略と、SDGs資金獲得につながる

SDGs活用ガイドには、将来、「SDGsへの対応が取引条件になる」と指摘されており、SDGsへの取り組みが、新しい取引先や事業パートナーの獲得、地域連携、事業創出の効果を生む機会が広がります。ESGの視点から「環境や社会に良い基準」が示されており、SDGsに取り組む企業は「良い企業」として認められ、有利な条件で資金を調達できる環境が生まれてきた。今後はESG投資の潮流があり、企業は環境や社会に対するリスクや機会に配慮した事業をするよう、投資家や金融機関から求められています。最近では、SDGsに取り組む企業を、金利などで優遇する金融メニューをつくる地銀が増えてきており、例えば、滋賀銀行、りそな銀行、八十二銀行、北洋銀行も投融資で、企業のSDGs経営を支援しています。
④事業機会の創出と、経営理念・ビジョンの再強化
新しい事業の創出は非常に難しいですが、未来に向けて解決すべき課題をSDGsの目標、ターゲットの中から選定して、自社の強みの技術やノウハウを活かせる課題を発見して、課題解決につなげて新規事業を創出することが考えられます。また、自社の経営理念、ビジョン、経営戦略、ビジネスモデルが、未来志向の社会ニーズに合致しているのか、SDGsを活用して確認でき、「世界共通言語」なので、国内のみでなく海外からもSDGs目標のアイコンを見ただけで、どのような社会貢献企業か想像できます。更に自社の従業員に対しても、世界目標と同じビジョンだと理解でき、モチベーションが向上して、働きがいがもてる企業として示すことができます。

イーラーニングで学ぶSDGs

・経営学の視点から、SDGsの専門知識、関連知識、歴史的展開を体系化

・科目単位での教育の質保証の取り組み

・各回eラーニングの学習の後に確認テスト、1科目ごとの学習後に科目修了テストを実施

・監修:青山学院大学経営学部 玉木欽也教授
詳しくは:https://filgate.jp/sdgs-elearning をご覧ください。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信