弊社が代表を務める次世代小売流通研究団体Next Retail Labで毎年他の団体と共同でフォーラムを開催します。今回は、次世代マーケティング研究団体との共催で「Z世代が熱狂するeスポーツとリテール/マーケティング」大会やイベント運営を手がける株式会社CyberZ 、イベントをスポンサードしマーケティング施策を展開している株式会社モスフードサービス、プロチームマネジメントなどを行う株式会社XENOZ、そして2022年にXENOZを買収してeスポーツ事業に参入し注目を集めたJ. フロントリテイリング株式会社と、eスポーツ事業にさまざまな角度から携わる企業から業界の第一人者が集い、eスポーツの現状や将来の展望、さらなる市場拡大に向けた課題などについて語ってもらいました。
また、Z世代の支持を得て市場を拡大しているeスポーツと、若者にアクセスしてファンの獲得や商品訴求などを目指すリテール業界が、お互いの強みを生かしながら価値を生み出していくためには、何が必要なのかNext Retail Labのフェローも参加したディスカッションが行われ、さまざまな論点で議論が交わされました。
CyberZが展開するRAGEの各種施策
(大崎章功氏:株式会社CyberZ)
最初に登壇したのは、株式会社CyberZの大崎章功氏。成長を続けるeスポーツについて、そして、他社と協業して興行しているeスポーツのブランド「RAGE」の取り組みについて、講演を行った。
Z世代が熱狂するeスポーツ、ファン数800万人、160億円の市場規模に成長
eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、ゲームを競技として捉え、従来のスポーツのようにプレイしたり観戦したりする際の名称です。
コロナ禍が落ち着き、現在は全国各地でオフラインの大きなイベントも開催されるようになり、市場規模は年々拡大しています。2023年の市場規模はおよそ160億円で、ファンの数は約800万人、来年にはサッカーのJリーグとほぼ同じ1,000万人に到達するのではないかと予測されています。
我々はエイベックス、テレビ朝日と協業して「RAGE」というブランドのeスポーツリーグやイベントを開催・運営しています。ゲームタイトルにも左右される部分はありますが、イベント来場者の7割から8割はZ世代で、男女の比率は約半々くらいです。10年ほど前は来場者のほとんどが男性でしたが、女性のファンが増えているというのも昨今の特徴の一つです。
RAGEのイベントは規模も頻度も伸びていて、今年は1ヶ月に1回ぐらいのペースで大規模イベントを開催していく計画になっています。また年間270〜280日のオンライン放送を手がけており、アジアからも注目されるような、日本で最も大きなブランドに成長してきています。
我々は、サッカーでいうJリーグのように大会を運営するという役割、それから格闘技でいうRIZINのようにマッチメイクをして大会をプロデュースするような役割を担い、プロに限らずアマチュア含めた、eスポーツにおける興行のブランドとして活動しています。
我々の事業としての大きな強みの一つは、人気タイトルの公式大会興行権を持っていることです。世界中にいろいろなゲームタイトルがありますが、例えば日本でも現在人気を博している「VALORANT」というゲームタイトルのプロリーグは、RAGEが大会運営をしています。
そして、多くのストリーマーやゲームのプレイヤー、視聴者との関わりの中で、いわゆるインフルエンサーを巻き込んだマーケティングの施策、タイアップなども実現可能です。SNSも、RAGEの公式アカウントのほかに、公式大会興行権を持っているゲームタイトルやゲーム大会のアカウントも一部運用しており、大きなリーチを武器に、いわゆるソーシャルマーケティングとしても影響力を作ることができているのではないかと思います。
Z世代へのリーチやコンテンツを生かし、あらゆる業種の企業とコラボ
このように成長を続けているeスポーツの世界で事業を展開している我々ですが、いろいろな取り組みに参加いただく企業の皆様の数も、ありがたいことに年々増えています。事業を立ち上げた当初は、いわゆるPCデバイス関連など、参加いただく業種が限られていたのですが、最近は、飲食や金融など、本当にあらゆる業種の企業の皆様とご一緒させていただけるようになりました。
いろいろな企業の皆様と施策を実施していますが、そうした取り組みがマーケティングにおける効果を生み出すことができたのかどうか、我々は定量的なデータや定性的な振り返りをレポーティングとして提出しています。
モスバーガーが実施するeスポーツマーケティング施策
(大楽泰督氏:株式会社モスフードサービス)
続いて、株式会社モスフードサービス大楽泰督氏より、スポンサー視点でのeスポーツとの関わり、マーケティング施策について紹介された。
「eスポーツ来てるぞ」、半信半疑で会場に行き感じた熱狂とは
まず熱狂がものすごい。そして来場者のほとんどがZ世代で、おしゃれな女性も多い。しかも中には、応援しているプレーヤーの名前が書かれたうちわを持っている人がいて、まるで「推し活」のような状況です。
初めて協賛をしたのは、昨年の3月に行われた、「VALORANT Challengers」というイベントです。そのイベントで、ストリーマーの方達にモスバーガーの商品を50個ぐらい差し入れして、その場で食べながらゲームを観戦し感想を言っていただいたり、ゲームの実況解説の方に食レポをしていただいたりするという施策を実施しました。モスバーガーが出てくると、「モスバーガー来た!」みたいなコメントが画面に出てくるんです。これが嬉しくてたまらないんですね。
eスポーツと流通企業のビジネスコラボレーションの形とは?
(島袋孝一氏:J. フロントリテイリング株式会社、金濱壮史氏:株式会社XENOZ)
講演の最後に、大丸松坂屋百貨店やパルコなどを傘下に持ち、eスポーツ事業への参入が大きな話題となった、J. フロントリテイリングの島袋孝一氏と、グループ会社であるXENOZの金濱壮史氏より、施策について紹介された。
「日本から世界に」をミッションに、プロ選手を育成・マネジメント
私たちXENOZは、「SCARZ」というプロeスポーツチームの運営、マネジメントをしています。2022年12月に、J. フロントリテイリングが出資という形で参画し、グループ会社という形で共同的に事業運営をしています。
SCARZはいろいろなジャンルのゲームの選手をかかえており、先ほどからお話が出ているVALORANTはもちろん、その他にも例えば女性に人気の高い「第五人格」というゲームの部門を持っています。第五人格は中国の会社が運営しているゲームなのですが、お台場に新しくできた体験没入型の新しいテーマパーク 、イマーシブフォート東京にも第五人格のアトラクションができるなど、かなり人気を集めているゲームです。
銀座シックス、PARCOなどグループ会社とのシナジーで活動を拡大
- フロントリテイリングの出資により、大丸松坂屋、銀座シックス、パルコといった施設を生かしたSCARZとのコラボレーションも増えています。
例えば去年のゴールデンウイークには、銀座シックスでeスポーツのイベントをやるという前代未聞の企画を実施しました。xRの技術を使って、第五人格に出てくるゲームの人気キャラクターが目の前にいるかのような体験をできるというものです。
まとめ
Z世代から支持され、成長を続けるeスポーツ業界。ゲーム業界の枠を超えて、若者とのコミュニケーション促進を目指す多くの企業が今、熱い視線を向けている。
eスポーツが今後、どのような飛躍を遂げ、新しい世界を見せてくれるのか、さらなる活躍が期待される。
フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信