2023年2月22日当社が主催する次世代小売流通研究団体Next Retail Labが開催するフォーラムでは、次世代マーケティングプラットフォーム研究会 NMPLABとの共催で5名のパネリストを招いて開催しました。各社の取り組み発表の後はパネルディスカッションを行い今後の展開の議論の模様をお伝えします。
トップランナーたちが独自の取り組みを紹介
■必要なのは「楽しい」こと、誰もがバーチャル空間に来るきかっけを
最初に登壇して頂いたのは、株式会社HIKKY 取締役COO CQO・クリエイティブディレクター さわえみか氏。株式会社HIKKYは、2017年末からメタバース空間での活動を開始し、誰もが持つクリエイティビティの価値が幅広く認められる世の中を創り出し、最も魅力的なバーチャル世界とアクセスを提供する会社です。全人類がバーチャル空間に入るきっかけづくりを目指しています。チームの方々は、それぞれアバターを持ち、自分たちのクリエイティビティを発揮する形を取っています。
バーチャルマーケットというメタバース上の3Dのイベントを開催しており、世界最大のVRイベントで世界から70社の企業、一般の540サークルが出展し、それぞれが作った3Dモデルの販売を行っています。ユーザーと企業側で会場を分けて作られていて、そこには現実と非現実両方を体感するという理由があります。
2023年夏にはリアルとVR空間をマッチさせたイベントも開催予定となっています。
メタバースになかなか入れない人も簡単に入ることができるツールの開発に取り組んでいます。
■青森ねぶたの下絵をNFTで販売、テクノロジーを活用し文化と人々の想いを継承する
2番目に登壇して頂いたのは、株式会社電通 事業共創局プロジェクト推進部ゼネラル・マネージャー(コミュニティ開発部ゼネラル・マネージャー)深谷尚史氏。
Web3 clubという電通グループのグループ横断組織を発足し、グループ全体を横断した多部署が参画した組織を組むことによって顧客の抱える各種課題に対応しています。
深谷氏は、テクノロジーの進化以外にも現代社会に起きている大きな変化として4つを述べていました。以下4つの変化に挙げられます。1.マーケティングの変化2.クリエイターの変化3.メディアの変化4.デジタルエコノミーの拡大。この中でも、1つの事例としてデジタルエコノミーで地域活性化に取り組んだことがあり、青森県ねぶた祭で「まとめ髪で夏祭りに行こう!」というメッセージで、「柚子水」のTVCMをアレンジしたねぶたを制作するなどのプロモーションを行いました。ねぶたは大型の作品である一方、作ったら破棄される運命にあるため、ブロックチェーン技術を活用したNFTを活用して、作品を記録に残すことを考えました。NFTの実施に当たっては、株式会社TARTの代表取締役である高瀬俊明氏に相談し、さまざまなアーティストの方とNFT作品の制作に当たられました。
この制作に当たってねぶた師の方の今までの常識では、作ったものを壊すという事であったのですが、絵に対するこだわりは残しつつ、新たな常識へと挑戦する必要があるということをおっしゃっていて、そこに対してのNFT作品がうまく活用できていると感じました。
■推しと二人きりでVR空間に…Web3を使ったVTuber関連サービス
3番目に登壇されたの、Donuts株式会社 経営企画室 プロジェクトマネージャー 竹内一博氏。Donutsは、BtoCビジネスとしては動画・ライブ配信事業、ゲーム事業、出版メディア、BtoBビジネスとしてはクラウドサービス事業から医療事業までを行っています。グループ会社で見るとより多くの事業に取り組んでいます。
一事例として「ときめきVR」というものがあります。これは、ファンが推しのVTuberと1対1でおしゃべりできるXRプラットフォームで、VR上でアイドルの握手会や通話をすることができるというサービスです。webRTC技術を使ってVTuberとファンを接続し、サーバを介していないため、記録が残らないという特徴があります。今後は360度カメラで撮影した実写映像をリアルタイムで送信、VR空間にそのまま再現するというサービスに取り組んでいくそうです。
■巨大なプラットフォームであるゲームを活用し、メタバース事業の課題を解決
4番目に登壇されたのは、株式会社REJECT 執行役員事業統括本部長 塚本陽一氏、株式会社REJECT 新規事業開発室長 兼 事業統括本部営業部長 野山嶺氏。REJECTは、eスポーツチームから新規事業として派生した会社です。「人生を彩るeスポーツ体験を提供し、世界に誇れる産業を創る」というミッションを掲げており、eスポーツチームの運営をはじめとし、新たなゲームカルチャーやコミュニティを展開しています。
様々な企業がメタバースに対して利用促進などの悩みを抱える中、人気のある「フォートナイト」をメタバースプラットフォームとして活用するなど、REJECTの保有するアセットを活用することで、各企業の悩みにアプローチされています。今後は、メタバースをマーケティング課題や目的に対して本質的な解決へと活用させていきたいとおっしゃっていました。REJECTでは、web3に対して面白そうだからやってみるという価値観だけではなく、実際に筑波大学などの大学とも共同研究していきながらビジネス、マーケティングに落とし込むにはどうすべきかを考えてます。
まとめ
リアルな延長線上で自分のアイデンティティを持って参加している人たちと、ビジネスで何かをしようとしている人たちで、現在は溝があります。これから必要になってくるのは、対立をなくして、メタバースに関わる人たちが、いろいろなメタバースの文化や、他で何をやっているのかを知り、いいところを取り込んでいくことではないでしょうか。そうしたことができる仕組みが発明されていく時期なのではと感じました。今は、ビジネスとして、企業がマーケティングしてどう活用するかという点に議論がいきがちです。お客様や体験する人にとって、それがないと何がだめなのか、どういういう形でそれが必要かという議論がおざなりになっています。企業にとってだけではなく、その先にいるお客様、生活者にどんな体験を提供できているのか、メタバースがあり、その中でどんな価値を提供できているのか。それをつきつめるといい形でソリューションが進化し、その先にWeb3やメタバースの未来が日本でもみえてくるのではないかと感じています。Web3は分散解放が進み対立するのではなく、全体がプラットフォームとしてうまく機能していくことで、そこにネットワーク効果が生まれるのではと感じています。
フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信