個人間での待ち合わせ、ホテル・飲食等での予約。以前であれば、事前に場所、空き情報を事前に調べ、早めに約束する等の行動をとってましたが、スマホの普及やO2Oの環境が整ってきた中で、その行動形態も大きく変化して来ています。予め確定することなく、移動中での検索やその間に受けたオファーにより、間際で最終的な決定をする行動が増えてます。
今回は、購入、予約が間際化している状況と、それに対応する事業者の姿を考えてみました。
消えた伝言板
近頃、人と待ち合わせをする場合、時間とおおよその場所、例えば渋谷に夜7時にと電話やメールで決めて、後は目的地に着いてから「今○○の前にいる」など具体的な落ち合い場所を決めてることも多いのではないでしょうか。
携帯電話が無かった頃は、駅には必ず伝言板があり、待ち合わせの際に、なかなか来ない相手に対して業を煮やしてチョークを握りしめて「○○さん、先に行っている」等、メッセージを残したりしていました。
ウィキペディアによると、1904年(明治37年)、東海道線の新橋駅をはじめとする8つの駅に、告知板という名称で設置されたのが発祥という説があります。
個人間の待ち合わせの連絡用などとして利用されていましたが、1996年頃に撤去する駅が相次ぎ、その要因として、携帯電話の普及による需要の減少や、いたずら書き(落書き)の多発などを挙げています。
1996年時点での携帯電話普及台数は約1,000万台、それまで台数を伸ばしてきたポケベルと同数となり、翌年にはポケベル、PHSを抜き移動体コミュニケーションデバイスとしては1位の座につきました。
また、今では当たり前になっている着メロ機能が搭載された携帯電話も、ドコモ「デジタルムーバN103HYPER」が世界初として発売され、その後、自分で作曲したメロディを着信音にすることができる機能を搭載した機器が各社から発売されてきたのもこの年です。
今では「伝言板」と言う響きは懐かしく感じられ、「災害用伝言板」などの様に「伝言板」はサイト上で活用するものとの認識に変化しました。
読めない顧客の動向スケジュール
先日、同窓会の案内ハガキが届きました。そこには、「出席の方はは○○日までに幹事宛に連絡を御願いします。」とあり、幹事の方の電話、メールが記載されてました。今までであれば、往復ハガキの返信用に出欠を記載して、郵便事情も考えて早めに返事を送ってましたが、今回は通常のハガキでの案内です。
郵便コストも抑えられ出欠を有無を早く知ることができると、良いことづくめのはずが、結果的には参加連絡の期日になっても連絡された方の数が予想より少なく、幹事の方が電話、メール、SNSを通して呼びかけています。
事業として見た場合でも、ホテル、航空会社、飲食店等、限り有る空間を構えていれば、顧客数、単価、稼働率、回転率等により売上や収益が左右され、それをを埋めていくことが至上命令となります。
ところが、一方顧客サイドからするとオフィス・家庭に居ながら、または、外出先でもスマホを利用して多くの選択余地があり、間際に決定していくことが可能となりました。
半年程前の日経新聞に掲載されていた記事からでも、
「昨年の年末年始の旅行やホテルへの宿泊予約状況をは12月以降に申し込みが例年より増えて、楽天トラベル(東京・品川)は19~26日に年末年始の旅行を予約した人が前年同期に比べ15%増えた。特にスマートフォン(スマホ)経由は2.5倍になった。旅行に出かけることを外出先などで決め、スマホで急きょ申し込む人が増えているという。
日本旅行も18~24日に12月出発の国内旅行を申し込んだ人が前年同期の約3倍になった。関東近郊の温泉地などに人気がある。「まだ申し込める旅行商品をネットで探し、店を訪れるなどして予約する人が多いようだ」(日本旅行)
カカクコムの宿泊予約サイト「yoyaQ.com」も12月に入って、大都市部のホテルなどを宿泊する当日か前日に申し込む人が増えている。こうした人が予約全体に占める割合は48%で、前年比で6ポイント上昇した。新宿ワシントンホテル(東京・新宿)も12月中旬以降、前日または当日に予約する人が前年同期に比べ5%以上増えた。」
こうした現象は連休に限らず、日常においても当たり前になってきました。それに対して事業者としてはどのように対応することが必要になってきたのでしょうか。
ビッグ・データの活用が鍵をにぎる時代に
限り有る座席、部屋をどのように埋めていくか、物品販売、料金徴収等で古くから行われてきた方法として、期間限定で早くに予約、または、払い込みして頂いた方に対して、割引またはポイントを増やす「早割」があります。
航空会社、鉄道会社、ホテル、旅館、飲食店等では座席、部屋を埋める為、イベント、セミナーでは動員数の確保、物品販売では仕入や生産ロスを改善する為、保険会社、役所では、料金徴収、最近では少子高齢化により予備校、専門学校、将来は普通校でも早くに入学を決めた受験生に対して割引をする時代が訪れるのではないかと思います。
このように事業者サイドからの、需要と供給のバランスを考えて活用されてきた「早割」の時代から、生活者サイドに立ったマーケティングが一層必要になってきます。過去の利用・購買履歴はもちろんのこと、今後は決定に至るまでの行動や状況、旅行であれば、サイトの閲覧、ガイドブックの購入、利用レストランの傾向、レンタルビデオの貸出状況等などから推論して個々人に対して最適なタイミングでアプローチしていく。このようにビッグ・データの活用が今後ビジネスの勝敗を決める重要な要素となってくるでしょう。
フィルゲート 菊原 政信