第9回:ネットとリアルを融合するOMOを考える

アップル社から5G対応のiPhone12シリーズが発売されました。全国的に5Gが使えるようになるにはまだ先のことですが、回線速度が上がる度に利便性が向上するほか、今までなかったサービスや仕組みが生み出されてそれに伴いフレームワークも変化してきます。

最近では、ネットとリアルの融合を意味するOMO(Online merges with Offline)と言う

概念が生まれてきましたが、今後は概念から社会実装が進むため。今回はこのOMOについて過去の歴史を踏まえながら考えて行きます。

 

OMOを実現する時代背景

 

1980年代パーソナルコンピューターの登場により、企業では今まで大型汎用機が主力で各部署に端末機が置かれていた状況から、やがて各社員がデスクで利用できるような環境になり、パーソナルな環境で利用されるようになりました。しかしながら当時は、パソコンさえ導入すれば効率が上がり生産性が格段に増すと考えられ、こぞって導入が進められてきましたがハードウエアの性能も高くなく、使用できるソフトも限られておりましたので「パソコンは、ソフトがなければただの箱」とも言われていました。1990年代になると携帯電の登場により固定の場所からの通話から解き放たれて、移動中でも通話が可能な状況となりました。パソコンの歴史においては、Window95の発売をきっかけに手書きからワープロ、電卓から表計算ソフト、手紙から電子メールの利用へと変容してきました。それと同時にインターネットの出現によりさらに家庭への普及が進みました。2000年に入ると携帯電話もiモードの登場により通話に加えて電子メールの利用が可能になりました。その後も画面のカラー化、通信速度の向上により、今までパソコンで行っていた検索、買い物などが携帯電話でも利用されるようになり、2007年にはiPhoneの登場によりさらに利便性が増し、一般的な呼び方も携帯電話からスマホへと変容し、今では一人1台持つ時代でパソコンの台数を上回るまでになりました。既に現在のスマホはパソコンを上回る性能を持つものに進化しました。

そのスマホも性能の向上のみでは、「スマートフォン、コンテンツがなければただの箱」であり、インターネット上でのSNS、買い物(EC)、動画・音楽配信、検索、AI(人口知能)音声アシストなど多様なコンテンツが利用できることにより私たちの生活に必要不可欠なものとなりました。この生活と密着した環境を作り出していくことこそがOMO時代の幕開けです。

 

ネットとリアルの関係性の変化 O2OからOMOへ

 

インターネットが普及するまでは、多くのことはリアルな世界で行われていました。何か調べものをするにも、印刷された本を読み、目的地への移動手段を調べる上でも地図を持って歩くことが一般的でした。さらに身近なことでは買い物をすることが変化しました。従来は買い物と言えば百貨店、ショッピングセンター、専門店などリアルな店舗に足を運びそこで商品を選び決済をして持ち帰るのが一般的でしたが、現在では百貨店、チェーンストアの売上をEC(電子商取引)が上回る状況にもなり今後もこの傾向は変わらない状況です。

出典:経済産業省 日本ショッピングセンター協会 日本チェーンストア協会 日本百貨店協会

 

また、リアル店舗を運営している企業においても売上高に占めるECの割合が増えて来ました。これは従来商品が置いてあるとことに消費者が移動して購入すると言うことから、消費者は買いたい時に買いたい方法で購入するという商品中心から消費者の都合や行動が中心となり購買行動が変化したと言えます。

この様に消費者の購買行動に寄り添うようにネットとリアルの関係も変化してきました。

最初に始められたのは、O2O(Online to Offline または Offline to Online)と言わるネットを利用している消費者に対してリアル店舗へ来店して頂く施策として、ネット上からリアル店舗で使用できるクーポン券を発行し来店を促進することや、GPS(位置情報)を利用して消費者が店舗から一定の距離にいる場合、クーポンや特売情報を送るという販売促進の色合いの強いものでした。逆に店舗ではQRコードを使ってネットの店舗で利用できるクーポンなどを取得できることなどが試みられていました。また、この頃からSNSも盛んに利用されるようになり、自分の行きたいお店や商品の情報やSNS上で検索して、自分の行った店舗や感想などをアップし情報共有されるようになりました。この情報を参考に見た人は店舗を訪れるという循環構造がうまれました。O2Oは販売促進の側面が強かったですが、さらにネットとリアルをシームレスに結びつける概念としてオムニチャネルへと発展していきます。

オムニチャネルはネットから店舗内の在庫が確認でき、取り置きや試着予約ができるなどさらにネットとリアルが近づいてきました。今では普通に行われているポイント加算なども、以前は同じ消費者であっても登録情報や履歴などは別々に管理されていたため、整合性が取れず、同じ個人であっても別人として扱われていましたが、顧客情報、在庫情報などが一元管理されることにより整合性のとれた情報管理が可能となりネットとリアルどちらを利用しても同じ個人として扱われるようになりました。さらにOMOの概念が浸透することにより消費者にとってより良い状況を作りだせると共に提供側にとっても有益なサービスを提供できるようになってきます。

 

OMOが実現するこれからの生活行動様式

 

最近、メディアで取り上げられているDX(デジタルトランスフォーメーション)はこのOMOを推し進める重要なファクターとなります。今までアナログで管理していたものをデジタルで管理することにより、生産性が上がるのみならずデータから浮彫にされるより良いサービスを開発する上でも重要なことです。それにはサービス提供側のみがメリット受けるばかりでなく、消費者の要望に寄り添いこれからの生活行動様式を踏まえて考えていくことが重要です。消費者の手の中には、24時間常に接続可能なスマホがあり多様な情報を取得するだけでなく、最近はQRコード決済をはじめ生活には欠かせない環境が提供されるようになりました。これから5Gに移行することによってVR(仮想空間)もネットの世界では活用されるようになるでしょう。しかしながら、人として生活している以上はネットの世界のみで生きていくことはできません。必ずリアルな場やコミュニティが求められることに変わりはありません。そのリアルな場としての環境をどのように提供していくことが出来るかが提供者側として深く考えていく必要があります。前回のコラムでは、売らない店舗を一つの例として取り上げましたが、小売業のみならず教育、医療など他の業界でもOMOの概念を理解し社会実装されていくことが求められてきています。次回はOMOをより深く理解して頂くことを中心にお届けします。

ご感想やこれからOMOを理解してどのようにビジネスに役立てていけば良いかご興味のある方は、お気軽に弊社にお問いわせください。

フィルゲート株式会社 https://www.filgate.jp

フィルゲート株式会社 代表取締役  菊原政信