第7回:待ったなし!オンラインとオフラインの融合

デジタルトランスフォーメーション(DX)を理解する

 

アフターコロナ・ウィズコロナ時代に向けて、あらゆる分野でデジタル化がすすめられていますが、最近はデジタルトランスフォーメーション(以降DXと呼ぶ)と言われることを耳にするようになりました。DXとは、経済産業省の「DXを推進するためのガイドライン」によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

小売流通の分野でもこのDXに多くの企業が取り組んでいますが、これは小売流通のみならず製造やその他の分野においても対岸の出来事ではなく、ビジネスをはじめ、社会全体に関わる潮流として動き始めています。新型コロナの影響により私たちの生活にも大きな影響をあたえるとともに、今後生活する上でも深く関係してくることです。

今回は、DXを理解するとともに、これから取り組む上での留意点などを述べて行きます。

 

全ての分野に求められるDXの本質

 

1940年代コンピューターが発明されて80年が経ちます。その間、大型汎用機の時代か1980年代に入りパソコンの普及により、この頃は情報化の時代、IT化が必要など言われはじめました。では、従来から言われているIT化とDXは何が違うのかという点について述べます。

IT化では、従来手書きなどアナログで管理・集計されていたものが、業務に合わせたソフトウエアにより作業効率の向上が図られました。1990年に入ってからはインターネットの普及によりデータとデジタル技術が進歩してきました。今まで処理されていた情報も量も増えて、その性質が大きく変化してきました。そこでDXは、単にアナログで処理してきたことをコンピューターのシステムに置き換えるといる意味以上に、デジタル化されたデータをどのように活用していくか、それによってビジネスモデルの再構築に焦点があてられています。例として小売業などで従来から発行されていたスタンプ式のカードはスマホのアプリに置き換えられることにより、個客がいつ、どこで、何時に利用されたか、行動履歴や趣向など今までは把握しえなかった情報を取得することが可能になり、それにより更に顧客にとっても有益となる情報やサービスを提供することが可能となりました。

DXへの対応は、このように商品の売買のみならず、今まで捉えられなかった情報を可視化することにより付加価値をもたらすのもとして重要です。このように、デジタルだからと言ってネットショッピングのようなサイバー空間での出来ごとではなく、実店舗としてのフィジカル空間でも活用されています。これからは、まさにオンラインとオフラインが融合していく時代に突入していきます。それはネットとリアルな世界をシステムによりつなぐシームレスな関係と言う以上に、個客が感じるストレスをフリクション(摩擦)と捉えて、ITの技術を駆使していかにそのストレスを軽減し、個客の感情や要望に寄り添う高いサービスを提供できるかに移ってきています。これは、消費者を対象とするBtoCのみなら企業対企業のBtoBにおいても商談、受発注、製造、納品などについても取り組みがなされています。この様にあらゆる分野に浸透していき、もはやどの企業においても無関係ではいられません。

 

製造業のインタストリー4.0と社会基盤としてのソサエティ5.0

 

近年、ドイツを中心に始まった製造業の垂直統合と水平分業を核とするインダストリー4.0(第四次産業革命)が注目されて、日本では更に社会生活基盤の中核とするソサエティ5.0として取り組みがなされています。

内閣府の発表によるとソサエティ5.0 では、仮想空間(サイバー空間)と現実空間(フィジカル空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)と定義され、「狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。」とされています。

今後は、教育、医療、金融、自治体、政府などあらゆる分野とも連携された仕組み作りが勧められてきます。商業の分野においては、従来の川上からの製造サプライチェーンと川下からの情報サプライチェーンが一体となり循環するモデルになっていきます。

製造・情報サプライチェーン循環概念図

 

この仕組みをいち早く社会に広く普及する為には、個々の企業が独自にすべてを一からシステムを開発する必要はなく、中小企業においても必要とするデジタルプラットフォームを使い、自社にあったシステムを短期間に構築することが可能です。

また、アパレルの分野などでは顧客のニーズや各変動を事前に見込んで、製造と小売りが一体となったSPA(製造小売)の導入や、メーカーが卸や店舗を介在しないDtoC(ダイレクトコンシューマー)などの試みがされています。こちらもアパレルに限らず今後あらゆる分野に普及していくことでしょう。部品製造などにおいても、CADデータより高性能3Dプリンターで多品種少量を生産し、短納期で製造し納品することも当たり前になってくる時代が来ています。既に先進的な考えを持つ製造業においては、製造された部品を製品組み立てに取り入れて軽量化、短納期に対応しています。

DXは、情部門のみで完結できるわけではなく、将来の企業存続を考慮した上に進められるべきことで、経営層の積極的な関与から始まり、全社を通して浸透されていく必要があります。

また、これからは自社のシステム内で全て完結するものではなく、自社のリソースの活用と将来社会インフラとの連携を将見込んだものとしてビジョンを描いていきます。今まで築いてきたレガシーなシステムのデータ資産の継承と人的リソース、これから未来への活用を考慮して行くことが肝要です。今後も持続可能な企業として存続する為に、中小企業ではIT導入補助金などを活用することも考えましょう。