第50回:自社の特徴を活かしたブランディングでこれから人材採用に繋げる

新年度も始まり、街には新入社員、新入学生が期待と希望に満ちた姿が見られます。一方、今後の慢性的な人材不足に対して企業として次の一手を常に考えて行かなければならない時代になりました。

物価上昇にともない賃上げを求められ、そのためには売上を上げるか、コストを抑えるか中小企業にとってはどちらも難しい課題です。更に新卒採用が危ぶまれる時代になるについれ、中途採用やAIを活用することにも注力していかなければなりません。そこで、今回はこれから企業として将来に対する採用や成長に際しての方向性を見出す為に、長年培ってきた社内の技術、ノウハウ、その他人的資産を踏まえてブランドを作りあげることにより成長を目指すことを目的とした施策などを考えていきます。

 

自社のポジションを見つめ直して世間に伝わることを考える

 

「うちの会社は長年下請けをやってきた、これと言って何か特徴的なものもないが時代も変わり、これから新たな展開をするにはどうしたらよいか、」など相談されることがあります。しかし、長年取引先の要求に合わせて品質、価格、納期など期待に応えてられたからこそ信頼されてきた、その結果として長年の取引に繋がってきたことと考えます。製造業であれば、品質を保つための加工・検査技術など工夫をされてきたことの賜物です。社内の方からすると、日常のことゆえそのことに気がつくことも少ないかもしれませんが、弊社では、依頼先に対し伴走者として外部から俯瞰して話を伺うと共に、視察させて頂くとそこはアイデアの宝庫である場合も少なくありません。例えば、製造の工程一つとっても磨きの技術であったり、組み立ての技術であったり優れた要素を持たれているなど様々な視点とアイデアが出てきます。この優れた部分を他の分野に応用し、異なる分野への働きかけをするも良し、自社独自の製品としてブランド化するなどが考えられます。

 

江戸時代からの老舗に学ぶブランド力の付け方

 

弊社が主催する次世代小売流通研究会「Next Retail Lab」では、毎年1月は100年以上の歴史を持つ老舗企業の方をお招きして、「温故知新」をテーマに講演をして頂いています。今でこそ歴史のある老舗企業ですが、はじめは皆試行錯誤して今のブランドを築いてきました。一例として、鰹節で有名な「にんべん」様は、江戸時代に戸板の上に鰹節を並べて商売を始めました。当然、当時は同様に鰹節を売っていたお店も多くあったでしょう。そこから世界最古の商品券(銀製)を作り広く販売しました。商品券と取り換えられるのは、従来販売してきた鰹節です。このように、商品は変わらずとも販売の方法を工夫するだけで新たな展開ができます。現在では、一般家庭の料理で使いやすくするように、削り出した鰹節を真空パックにして小分けにして販路も百貨店からスーパーに販路を広げて更に普及することになりました。今では、家庭で鰹節を削ることも無く、手間が省けて様々な料理に利用されていることは周知のことです。このように自社の製品や資源をインターネットで販売する、業務用でまとめて販売していたものを小分けにして一般の人が買いやすくするなど工夫次第です。

 

ブランドを認知するまでの速度が上がった

 

ブランドとは何でしょう。私が思うには、一般に周知された先入観と考えます。すなわち、物がそこにあるだけでは周知されませんが、これを様々な方法で知って頂く、その集合がその商品やつくり出した会社のイメージとして捉えられ、そこからイメージされる先入観が納得されていきます。今ほど情報網が発達していない時代では、評判は人づてに伝えられてきました。それが何代もの間言い伝えられて前述の老舗「にんべん」では、鰹節と言えば「にんべん」、「にんべん」と言えば鰹節としてのブランドが確立されてきました。

ブランドを確立するには、多くの人に先入観を持って頂くのに長い年月が必要かと言うというとそうではありません。現在ではメディアやインターネットが発達して瞬時に様々な情報を多くの人に知ってもらえる時代になりました。例えば、「関サバ・関アジ」をご存じの方も多いと思いますが、「関サバ・関アジ」と言うと高級なブランド魚のイメージを持たれているかと思います。ではこの「関サバ・関アジ」が昔から高級魚扱いであったかと言うとそうではありません。以前からおいしい魚として一部では知られていましたが、本格的にそのブランドイメージが持たれるようになったのは、1988年頃と言われています。さほど昔のことではありません。大分県漁協佐賀関支店に所属する漁師が一本釣りで獲ることがテレビ等のメディアに取り上げられ全国にその知名度と「関サバ・関アジ」を高級魚としてのブランド価値を確立してきました。このように全国見渡せば、魚を一本釣りすること自体は珍しくはありませんが、やり方次第でブランドを年月かけずに確立できた好例です。

 

中小企業でもブランド力を付けて採用に活用する

 

我が国の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年の約8,700万人をピークに減少に転じており、2015年には約7,700万人まで減少してきている(この間の減少は約1,000万人)。この傾向は将来にわたって継続すると見込まれ、2060年には約4,800万人と、2015年の約6割の水準まで減少すると推計されています。

出典:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」

 今後人材不足は更に加速していき、企業としては、採用する人を選ぶ時代から選ばれる時代へと変わってきます。私は、日頃大学生と接していて3年生、4年生に就職についての率直な気持ちを聞いてみると、給料が高いことにはこしたことはないが、それと同様に自分の意見を取り入れてほしい、SDGsを意識している会社が望ましいなどと言う世代が増えてきたことを実感します。一方、まだ社会に出ていないうちから、3年間をめどに転職することを考えていると言う意見もあります。3年間であれば採用した企業としては、これから本格的に活躍して欲しい時に退職されては大きな損失です。それでは、企業としてどのように働き甲斐のある職場としていけるのか。その一つの考え方として、今回のテーマとした「自社のブランディング」を考えてみることをお勧めします。ブランドを作りあげていく為には、何も最新の技術の開発や設備の導入、特殊な能力の取得が必要とは限りません。既にその種は皆さんの会社の中に隠されているのです。その種を見つけ育てあげて行く事により、新たな展開ができるきっかけにもなります。弊社では、中小企業の様々な分野でお手伝いして参りましたので、更にご興味があればお問合せください。