第32回:FX詐欺 身近にある落とし穴

コロナ感染もピークを過ぎ海外渡航者の受け入れ基準も下げられてインパウンド需要が期待されるようになりました。一方、長年給料は上がらず、円安や紛争の影響などにより物価の上昇、老後の不安なんど、今後の生活を考える上で現状の収入だけでは不安になる気持ちにもなります。少しでも現状の収入を補うため副業をされている方もいるでしょう。今回は、そのような不安に付け込んだ悪質なFX(外国為替証拠金取引)詐欺について注意喚起の意味を込めて伝えします。

 

些細なきっかけから魔の手は忍び込んでくる

 

日常生活においてSNSの活用は、もはや常識となりました。知り合いや友達はもちろんのこと、会ったことの無い人達とも繋がりコミュニケーションが取れることでネットワークも広がり有意義なものです。しかし、その便利な仕組みを逆手にとって詐欺行為を働き損害を与える状況も増えてきました。最近ではロマンス詐欺などもその一例ですが、投資をしてお金を増やしたいという欲求に付け込んだ悪質な例も多々あります。これらは日本のみならず世界中で展開されている詐欺です。一説によるとその被害総額は数千億円にものぼるとも言われています。

今回は、実際に被害あわれた方々からの取材等で得られたFX詐欺の実態について再現していきます。初めは、SNSで皆さんも経験があることが多い知らない人からの友達リクエストがきっかけとなるケースが多く、リクエストからでなくともダイレクトメッセージでコンタクトを求めてくる場合もあります。大抵、SNS上のプロフィールを見ると写真は美男・美女である場合が多く、一度繋がりを持った後は、自己紹介として自分は日本人の父または母を持ち他国で生まれ育った為、日本の文化や風習などに興味があり日本人の友達が欲しいと切り出してきます。その後、話の続きは特定のSNSでしたいと持ちかけてきてそのSNSへと誘導します。そこでも最初のうちは、趣味の話や家族のこと、時には写真を送ってくるなど通常コミュニケーションでありがちな会話をしばらく続け、こちらの警戒心が緩む頃合いを見計らって本題として、世界経済が不安定てあることから、これからは副業をして収入を増やしていく必要があるなど持論を展開していきます。そこであなたは投資をしたことがあるか、または興味があるかなどの探りを入れてきます。興味は無いと伝えてもこれからは、将来に備えて投資をする必要性があると執拗に話を続けてきます。更に自分が進めるF X投資は親戚(叔父、叔母、兄、姉)がウォール街の上層部で働いている、もしくは先生と呼ばれる金融に精通している教授等が分析、指示する確実な情報をもとに1日10分程の短時間で売買を行うことで確実に利益を上げられるなどと言ってきます。時にはそれらの関係人物もSNSで繋がり登場するケースが見らます。大抵の取引の場合、MT4またはMT5というスマホのソフトを使って売買をすることを求めてきますが、このアプリケーション上に存在する会社の中には架空の相場を仕立て上げている詐欺サイトが含まれています。ここで利益が上げられることを裏付けるため、相手が取引をして多くの利益が上げられている画面を送ってくる場合もあります。

 

詐欺取引の方法

 

取引をするにあたっては、まず仕組まれた会社への登録と運用資金の送金を求めてきます。この段階でその会社の担当マネージャーが現れ資金の送金の仕方などを指示してきます。特徴的なのは、送金する口座は個人の口座である場合が多く、更に追加で資金の追加をする場合、都度違う口座を指定してきます。そして指定された銀行口座は国内の特定の銀行である場合が多いです。

送金後、ドル建ての金額がソフト上の画面に反映され取引の準備が整います。その後は繋がりも持った相手や指南役に扮した詐欺師の指示に従って取引を行います。国内のF X取引ではレバレッジが25倍と定められていますが、海外の取引所では数百倍などのところもあり、少額から始めたとしても多額の利益が得られたように表示されます。そこで更に儲けを多くしようと追加の資金の投入を催促してきます。しかしながら実際の取引が行われていることはなく、これはあくまで詐欺集団が用意した偽りの相場情報なので利益が上がるように操作されています。

何度か取引が行われて、十分に儲けが出たところからが新たな詐欺行為の始まりです。自分の口座から出金を申請すると、出金するためには収める税金、国際条約に定められた手数料、マネーロンダリングの疑いにより口座が凍結されてその解除のための費用など様々な理由をつけてお金を要求してきます。状況によってこれらが組み合わされて、その度に送金しても更に別の理由により送金することを求められるという全く出金が実行されない状況をでっちあげてきます。そして、これ以上送金されないことを見極めると、最終的には取引をしていた会社は消滅、ログインできなくなり、関わってきた詐欺師達とのはS NSで連絡が取れなくなります。投資した資金に加えて、出金時に要求された金額を加えた2重の被害を受けて、初めて詐欺に引っかかったことを認識するケースが多々あります。

F X詐欺に追い討ちをかけるサルベージ詐欺

 

サルベージ詐欺とは、遭難した船の人命・船体・積み荷などを救助すること意味するサルベージにたとえた詐欺です。つまり今まで資金をつぎ込みその結果、騙されたことに気づき可能な限り取り返したくなる心情につけ込んだ、回収を理由とする詐欺の形態です。最初の接触方法は前述と同じくSNSを通じてコンタクトをとってきます。話をしている中で過去に詐欺にあったことがある人がターゲットにされます。

はじめは、詐欺にあったことに同情を示しそのような詐欺する会社を撲滅することを目標として、投入した資金を回収することを行っているなど共感を得られる理由を伝えてきます。そのために自分達は特別な技術を持っており、今まで多くの人を助けてきたと言ってきます。詐欺にあった会社名を教えて貰えればその会社から今まで投資をした資金を引き出すことが可能であるというものです。ここでも前述の詐欺と同じように技術のプロになりすました人物も登場します。そして、つぎ込んだ資金を回収するための手数料を求めてきます。当然そのような技術は持ち合わせておらず、いかにその手数料を騙し取るかが彼らの目的です。F X詐欺同様に出金が成功しなかった理由をつけて次から次へと送金させることを催促してきます。

 

詐欺集団に取り込まれないための注意

 

詐欺に対してだけではありませんが、SNSは便利である一方、知らない相手からのリクエストには安易に応じないで慎重に見極める必要があります。この手の詐欺について特徴的なことは、ビデオオンラインにおいても相手の写真は大抵芸能人であったりモデルであったり本人であることはまずなく無断で流用している為直接顔を出さず、会話すらしたことが無い場合もあります。本当に本人の写真なのかを確かめる為には、SNSで掲載されている写真をGoogleやYandexなどの画像検索で調べることをおすすめします。次に勧誘されているF X会社をwikiFXで検索して調べます。このサイトでは、世界中のF X会社の評価や詐欺会社の情報、ライセンスの有無、信用度や詐欺にあった人からの投稿が寄せされています。更にその会社のサイトのドメインがいつ登録されたかをドメイン検索Whoisなどで調べます。サイト上では長年の実績をうたっていても、大抵ドメインは数ヶ月以内に登録されたものが多く、そのような会社は疑ってみる必要があります。詐欺師はグループを作って活動していますので、投資をしてしまう以前に十分吟味をして甘い話には乗らず、少しでも疑わしい点があれば近寄らないことを心がけましょう。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信