第24回:アート思考でSDGsを考える

今年の1月号では、顧客や利用者を想定して商品・サービスを作り上げていくデザイン思考についてお伝えしましたが、今回は自分自身の内に秘めた思いや価値観を具体的に商品・サービスに反映していくアート思考についてお話していきます。アート思考は芸術家などが思い描くことを表現していくまでのプロセスです。現在の世の中のように先行き不透明な時代において、既定路線で成長できるという確約はなく今までの方法論に縛られない新たな発想やイノベーションが求められてきます。また、SDGsにとっても、論理的に制約された条件を超えた新たな取り組みのきっかけになり、持続可能性を考える上で将来はそれが当たり前のようになっている時代がくるかもしれません。

 

アート思考とビジネス思考の違い

 

アート思考の話を進める前に、以前お届けしたビジネス思考について少しおさらいをしましょう。デザイン思考では、対象となる利用者や生活者を想定して、いかに便利で有効な商品やサービスを提供できるかという対象者が存在します。そのため、それらの対象者を深く知ることから全てが始まります。そこで想定される「ペルソナ」を作りあげ、そのペルソナに対して「共感」を得られるにはどうしたら良いか、アンケートやインタビューによって仮説としたペルソナと実在の人物と、同じである部分や差異を洗い出します。2番目の「定義」の段階では、アンケートやインタビューで収集した被験者の声を吟味して、商品やサービスに対する要求を定義していきます。この時に、カスタマージャーニーマップなどを作成して潜在的な要求や想定される感情、行動等を可視化していきます。3番目の「創造」段階では、アイデアや課題解決策を生み出すためにブレーンストーミングなどの手法を用いて、質より量を多く出していきます。この時の留意点としては、出てきた意見に対して否定や実現性を深く考えるのではなく、あくまでも様々な角度から浮かんだアイデアの量を求めていきます。4番目の「試作」では、創造で出たアイデアや課題解決策などを実際に試作品として作成するなどして、その解決策を実施してみます。このように実際に手に触れたて体験できるようにすることによって、現実のものとして認識できるようになり、課題等も具体的に浮かびあがってきます。そして最後の段階「テスト」では作り上げた試作品やサービスをペルソナに近い実在の人物に試用して頂きそれを繰り返していきます。この段階で得た検証結果をもとにして、必要に応じて、「定義」から「試作」の段階にさかのぼって更に顧客にとって良い品やサービス開発に結びつけていきます。以上がデザイン思考のプロセスです。

 

アート思考のプロセス

アート思考は、本人の感性が発するものを具現化していくことを言うことから、前述した通り受け手となる対象者は最初はは存在しません。それであるならばどのようにアプローチして具現化するのかと言う疑問もあることでしょう。その為にまず、最初に自分の「価値観」は何かを捉えて、そこに見出すものがあるかを考察していきます。

次にその価値観は何なのかと「創造」していきます。創造力で膨らませた想いやアイデアを「試作」していきます。試作の段階では、他者を意識することなく自身の価値観を対象としてそれを表現していき具現的なものとしていきます。自分と他者はこの具現化された、ものや事象を媒介にして「共感」を呼ぶことになります。つまり、他者は自分にとって最適なものとして捉えた時にそのものや事象が効果あるものと捉えることになります。すなわち、誰しもが良しとする、ものやことが全てではなく、あくまでも選択した他者自身にとって共感できることこそが一番であるということです。ビジネスやマーケティングにおいても、消費者やユーザーに共感されることにより購入、情報が共有・拡散され、コミュニティが形成されるということも起こります。

 

ビジネスとアートとデザイン

 

このように、アートとデザインは異なる思考プロセスを持ちますが相反するものではなく、例えばアートとして絵がかれたものがデザインされた商品に印刷されて販売されるなどは例として挙げられます。

最近では、NFTアートと呼ばれるデジタルアートと仮想通貨の技術であるブロックチェーンを活用して唯一性を証明してデジタルアートに価値を付ける試みもされています。この技術は、絵だけではなく音楽などにも使われるようになるでしょう。今まで、デジタルなものはコピーが可能で著作者の権利が保護されにくい側面がありましたが、今後は唯一性が担保されることにより、創作意欲や環境を保つことに一役かうことになります。

また、これらのデジタル技術の他に、最近ではメタバースと言われる仮想空間の活用が注目されるようになりました。これは、デジタルツインとも言われていますが現実の世界と仮想の空間の二つが存在し我々は距離や時間を気にすることなく、どちらでも好みの場所でコミュニケーションをとることが可能となり現在のEC同様に3次元空間で商品の売買やサービスを受けることが可能となります。

コロナ禍において実態経済は停滞しがちですが、一方このように新たなビジネスチャンスとなる動きも出始めています。まさしく、SDGsの観点からこれらも関連性があり更に進める上で大きな要素となることでしょう。

デザイン思考のプロセス