第20回:SDGsの基本とビジネスへの関わり⑩

SDGsとDXは必須の時代

 

一時のブームで終わらない

 

近年、SDGsと並んで話題となることが多いキーワードにDX(デジタルトランスフォーメーション)があります。DXとは、単純にアナログで行われてきたことをデジタルに置き換えられること以上に、デジタル技術により私たちの社会活動やビジネスモデルに変革を起こす意味で使われます。近年では、2018年の経済産業省が公表したDXレポートの中で記載された「2025年の壁」として、今後訪れる過去に築かれたシステムの限界やそれを支えてきた人材が定年退職をむかえることによる課題が述べられました。これを克服するためにはDXが必要不可欠であることで改めて注目され始めました。

その後、新型コロナの感染が世界中に蔓延して、経済や生活、環境が一遍する事態となり、このことがSDGsとDXをこれまで以上に早く進める要因ともなりました。今後コロナが終息しても、継続していくことがまさしくサスティナブルな社会、企業に求められます。。

 

SDGsとDXは相性が良い

 

SDGsはこれまで述べてきた通り、今後業種や規模の大小を問わず全ての企業が取り組むべきことです。これからの地球環境をいかに、より良い状態にしていくかというマクロの視点と各企業や個々人が取り組むべきミクロの視点を持って取り組んでいくことが重要ですが、これを推進する上でもDXが必要不可欠です。商品であればモノの製造から販売に至るまでのサプライチェーンにおいて、どの段階においてもSDGsの取り組みは進められ、それを効率的に行うにはDXはなくてはならないものになってきています。

身近な例としては、コロナ禍において多くの方が試し、その利便性を感じたこととしてリモートワークなどもその一例でしょう。コロナ禍以前であれば、働く場所はオフィスであり通勤することを前提とした働き方でしたが、コロナによりそれが難しくなりました。しかし、日常の仕事を進めなければなりません。そこで、出勤をせずとも打合せや会議ができるZOOMなどのウェブ会議ツールやSlackなどチャットツール、コミュニケーションツールとして今では一般的になっているLINEなどをビジネスでも使用する機会が増えたことと思います。これらのツールを使用することで今までのビジネススタイルが変りました。また、オフィスの在り方もリアルとネットでのハイブリッドな活用により根本から見直されスペースの削減や勤務体系の抜本的な見直しなど、新たな取り組みがされ始めました。これも持続可能な企業の在り方としてDXとの連携と言えるでしょう。

DXの目的は、最新のシステムを構築して導入することではなくITを活用して変革を遂げていくことであり、身近で使えるものを活用して生産性や効率を上げ、コミュニケーションを円滑にする仕組み作りなどもDXと言えるでしょう。

 

顧客ロイヤリティを高める

 ビジネスの形態はBtoB、BtoCと企業によって違いはありますが、いずれにしろ特殊なケースを除き、大半の企業は顧客に対して製品・サービスを提供することにより、対価を得ることにより存続が可能です。SDGsは社員のモチベーションを高め、DXは仕事の効率を高めるという側面を持つと同時に顧客に対して、自社に対するロイヤリティを持って頂くための活動でもあります。

新型コロナの感染の拡大に伴い各地で緊急事態宣言が発令され、商業施設では休業や私たちも不要不急の外出を控えざるえない状況にありました。このような状況において、BtoCの業態では全体の売り上げに占めるECでの販売の割合を示すEC化率が、今までの予想では10年かかるだろうと言われていたことがこの1年間で達成された例などもありました。このように新型コロナによって、販売の対応策としてDX化が進み顧客の購買行動も変容したことを示しています。また、新型コロナ以前からDXに取り組んでいた企業では店舗が閉まっていた期間においても、スマホのアプリによって顧客に対して商品や自社が取り組んでいる様子などを伝えることにより、コロナ以前にも増して顧客との繋がりを深めることができ、その結果予想より売り上げのマイナス幅が小さく再び開店する日をむかえた日には、多くの顧客が店舗に訪れる現象として顧客ロイヤリティを高めることができた例もあります。

 

新たな販売形態DtoCはSDGsとDXのたまもの

 

最近は、卸や実店舗を通さず顧客に販売するDtoC(Direct to Consummer)が注目されています。これは単に商品を自社のECサイトで販売することを意味するだけでなく、販売者がSDGsに配慮して作ったモノを提供するとともに、顧客はその企業の意思や商品の持つ意味を理解して購入するという新たな活動が始まっています。従来のマス・マーケティングによって築かれてきた、供給側から購入側への一方的な情報の流れではなく、購入側も積極的に供給側との繋がりを深め顧客ロイヤリティを前提とした購買行動です。このようなことを実現できるようになったのも、DXの導入が進んできたからにほかなりません。既に顧客はリアルとネットの区別なく商品の情報や購買を経験してしており、ニューノーマルな時代においてはそのことを前提に考え、行動を起こしていくことがさらに必要となってきます。

 

人材×SDGs×DXを推進する足掛かり

 

今後のニューノーマル時代において、持続可能な世界観を持って進めるにはSDGsについては、以前ご紹介したSDGsコンパスを参考にするのもよし、DXについては従来であれば大きな予算をかけ、自社にあったシステムを一から作り上げるフルスクラッチ型が主流でしたが、昨今では、さまざまなクラウドプラットフォームが提供されているので、それらを組み合わせ導入することをお勧めします。なぜならば今後も多様な変化が訪れることを想定した場合、社内の各部署のみならず他の企業や団体とも歩調を合わせて進めていく状況も多々生じてくるでしょう。そうした時に自社専用にこだわり過ぎると連携が複雑になり、予期しない障害が発生するリスクを抱えることとなります。また、社内の人材を教育することや外部から新たな人材を求めることになっても特別な仕様になっている場合は、かえって時間とコストが掛かってくることも考えられます。それよりも、信頼性が担保されているクラウドサービスなどを導入し、早くサービスを立ち上げて検証を積み重ねていくことが得策です。SDGsもDXも共通して言えることは、あくまでも社員やスタッフなどの人材を上位に据えて、その土台となるDXプラットフォームや目指すSDGsの目的を達成できる手段・方法を検討することが肝要です。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信