第18回:SDGsの基本とビジネスへの関わり⑧

自治体における地方創生SDGsと「SDGs未来都市」

 

地方・自治体が直面している社会問題

 

都道府県別の人口増減の予測が定期的になされていますが、東京都と沖縄県を除いてすべての地方自治体において顕著な人口減少傾向を示し、特に地方の小規模な県において著しい状況です。このような人口減少による、少子高齢化、若者流出、過疎化などの社会問題は、今後、表に示すように自治体運営に深刻な影響を与えます。

 

人口減少に起因するまちづくりの社会問題

エネルギー供給需要減により事業者の設備投資・老朽化更新の意欲が低下する
通信利用者減により事業者の設備投資・老朽化更新の意欲が低下する
上下水道世帯数減により自治体単独による設備投資・老朽化更新が困難になる
公共交通利用者減により、路線の維持が困難になり、利便性が低下する
公共医療人口減により自治体単独による設備投資・医療機関運営が困難になる
公共教育児童数の減少に伴い学校の統廃合が進み、児童の利便性が低下する
地域セキュリティ人口密度の低下や空き家の増加などにより、地域の安全確保が困難になる
地域金融地域から産業が流出し、地場の金融機関の相続が困難になる

出所:村上周三「序章 地域におけるSDGs」、図0-3、p.5、『SDGsの実践 自治体・地域活性化編』、事業構想大学院大学出版部、㈱宣伝会議、2019年

 

そこで2014年12月、今後5ヵ年の地方創生に関する目標や基本的な方向を提示する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が取りまとめられ、閣議決定されました。この総合戦略は、これまで毎年末に改訂されています。

2018年6月に閣議決定された基本方針においては、官民連携の加速化が追加され、内閣府に「地方創生SDGs 官民連携プラットフォーム」が立ち上げられました。ここでは、地域の社会課題の解決に向け、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じた民間企業の参画を促進しています。また、同年2018年12月に「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2018年改訂版)」が閣議決定されました。

「Ⅰ.基本的な考え方」の「地方創生の一層の推進」にあたっては、持続可能な開発目標(SDGs)の主流化を図ることがあげられており、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、経済、社会及び環境の統合知向上などの要素を最大限反映することとされています。「Ⅲ.今後の施策の方向」の「3.政策パッケージ」においては、地域におけるSDGs達成のためのモデル事例の形成と普及促進、「地方創生SDGs 官民連携プラットフォーム」を通じた民間参画の促進、その後内閣府は、2019年1月、「地方創生SDGs ・ESG金融調査研究会」を設置し、地方創生SDGs ・ESG金融のフレームワークの構築に向けた検討がされてきました。

出所: まち・ひと・しごと創生総合戦略(2018年改訂版)

 

SDGs未来都市とは

 

内閣府では、政府のSDGs推進本部の動向や、まち・ひと・しごと総合戦略を受けて、自治体によるSDGsの達成に向けた取組みを公募し、優れた取組みを提案する都市を、「SDGs未来都市」として選定します。また、「SDGs未来都市」の中で特に先導的な取組みを「自治体 SDGs未来都市モデル」として選定し、補助金などで支援しています。2021年度には31の都市が選定されて一気に加速しています。

 

出所:2018年度・2019年度 SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業

 

SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業

 

2030年に向けた未来都市の課題テーマ設定や、SDGsのゴールとマッチングした理念構築をするために、モデル事業では、「経済・社会・環境の3つの柱」を提示しています。これは従来から、「トリプルボトムライン」と呼ばれてきました。それと共に、全体を、3側面をつなぐ「統合的な取組み」を実施することで、各分野における双方向の、より高い相乗効果の創出を目指します。「SDGsウェディングケーキ」はこのような取りまとめ方の一例です。

多様なステークホルダーとの連携を通して、自律的好循環が見込める事業。選定された自治体は、3年間の取組みを具体化したSDGs未来都市計画を策定し、各計画が公表されています。民間参加の促進ということで、感度のよいSDGs推進企業は、これらの自治体と共に、産官学民による連携事業化の牽引役を担っています。

 

ウェディングケーキモデル

出所:ストックホルム・レジリエンス・センター 所長 ヨハン・ロックストローム氏

 

内閣府 地方創生SDGs 官民連携プラットフォーム

 

2018年8月、内閣府が事務局となり「地方創生SDGs 官民連携プラットフォーム」を設置しました。主な活動として、①マッチング支援:研究会での情報交換、課題解決コミュニティの形成。例えば、地方創生SDGs・ESG金融調査研究会②分科会:会員からのテーマの提案に基づき、会員が分科会を設置(企業、NPO、自治体、省庁)。内閣府自体が提案者、例えば「企業版ふるさと納税を活用したSDGsの推進について」③普及促進活動:国際フォーラムの開催、展示会への出展、情報発信、などがあげられます。一方、国レベルのみならず、地域においてどのようにSDGsを取り組むか(SDGsのローカライズ:Localizing the SDGs)が重要課題となっています。そのためには、国内外の自治体同士での連携が必要です。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信