第16回:SDGsの基本とビジネスへの関わり⑥

SDGsグローバルWAYマネジメント -未来志向のSDGs経営に向けて-

 

今後のSDGs経営の第一歩とWAYマネジメントへの進化として考えられるのが、「SDGsマインドの醸成」です。つまりCSRを基盤として、SDGs&ESG&CSVの領域をさらに拡大していき、やがてSDGsマネジメントへ進化させて行きます。この流れの中では、SDGs社内Projectの発足、C S Vビジネスモデルの立案、E S G評価・E S G投資の実施、統合報告書作成などと密接に結びついています。

従来自社独自、いわば我流で作られた経営理念をS D GsグローバルW A Yへと刷新し、それに基づきビジョン、中期・長期経営計画、行動指針と落としこんでいきます。

すなわちS D GsグローバルW A Yとは、W A Yの定義である「企業の存在意義を明示するために、どのような企業活動を通じて実現するのかという方針を、内部や外部に発信していく手段の一つとして、『経営理念・ビジョン・行動指針』を明文化し、それぞれのエッセンスを相互に関連づけたもの」として事例としては、 J&J クレイド(我が信条)などです。S D Gsを連携させ、それはS D Gs経営理念(ミッション、バリューなどが含まれることがある)とS D Gsビジョンを社長や役員などの企業リーダーがつくり、組織文化として全社員に向けたS D Gs行動指針を全社員に向けたSDGs 行動指針をOff-JT(浸透研修)やOJT(職場内訓練)などによって、企業グループ全体の組織文化として醸成されたうえで、全社員が通常の業務を通じて行う際の言動の規範(ルール)としていきます。

 

バックキャスティング型「ビジョン」 ー現状積み上げ型の事業目標との違いー

 

現状積み上げ型の事業目標の設定の仕方としては、現在までの経緯から、次年度以降へ積み上げた売上・収益目標、事業方針を立てています。

バックキャスティング型「ビジョン」の基本は、現在から未来を考えるのではなく、未来からあるべき姿を発想し、現在へとつなげます。導入のシーンとしては、将来的なビジョンや目標を掲げ、そこから現状を考え、ギャップ分析をします。それらの将来的なビジョンとギャップ分析に基づいて、現在からどのような革新的な打ち手をすべきか、事業構想を創造していく時などに有効です。

『バックキャスティング』型のビジョンの事例としては、本田技研工業創業当時の本田宗一郎氏が「世界一のバイクメーカーになる」ことをビジョンに掲げ事業を推進してきました。

その他でのバックキャスティングが有効な案件として、長期的な計画を立てたいとき/不確実性が高いとき、複数のステークホルダーが関わり、複雑なシステムのデザイン、現実のドミナント・トレンドそのものが問題(クリアーしたいハードル)の原因となるときなどが挙げられます。

将来のビジョンとして、利他なる未来への志(パーパス)、将来の事業のありたい姿(未来像)、ある時点で実現したい達成目標、自社が目指すべき事業の俯瞰イメージをわかりやすく明文化します。ビジョンを語る上で『共感』を生むことも大切です。例えば○○分野で世界No.1の社会課題解決企業をめざすなど①実現したときの物語②実現するまでのストーリー③生まれた背景の物語を盛り込みます。

このビジョンと現状としての積上げ型の「経営目標」とを比較します。通常この目標は、どういう状態か予測可能であり数値化が可能です。また、財務指標設定、スケジュール化が容易です。中期経営計画目標の中では、選択と集中の繰り返し、コストカット/リストラ、短期的な業績改善が盛り込まれケースが多いです。現状維持の限界を知り、持続可能性の追求をする上で未来志向『バックキャスティング』でビジョンと現状のギャップ/課題発見を行なっていきます。

 

SDGs グローバルWAYマネジメント 「経営システムの制度化」と「組織文化の醸成」―

 

これまでに述べてきた通り、S D GsグローバルW A Yをマネジメントとして落とし込むためには、経営トップや役員、幹部社員によりSDGs グローバルWAY、つまり経営理念/志(パーパス)、バックキャスティングのビジョン、バリュー/共通価値(CSV)を固めてそれをグローバル・グループ、企業の全社員、(現法人・支社含む)にSDGs グローバルWAY行動指針として落とし込むことにより組織文化の醸成がなされます。そこには経営トップのイニシアティブとコミットメント+SDGs推進セクションの設置+ログラム&プロジェクトマネジメント/外部専門家支援+SDGs経営の長期予算化を検討していきます。このようにグローバルWAYマネジメントを行いう上でブランディングの方法としては、社外に対する「エクスターナル・ブランディング」については、SDGs 経営システムへの制度化として以下があげられます。①成長戦略/ドメインの再定義②未来志向の経営戦略/事業戦略③ビジョンから中・長期期経営計画への展開⑤未来志向のCSVビジネスモデル⑥新規事業企画/商品サービス企画プロジェクト⑦経営組織改革/事業部再編⑧グローバル人的資源管理⑨グローバル人事システムなどです。発信方法としては統合報告書にまとめホームページで広く知ってもらう活動を行います。社内に対する「インターナル・ブランディング」では、①創業時からの理念、思想、価値観の再整理②WAYマネジメントの体系化/ストーリー化/広報戦略・成文化、ステートメント作成、スローガン表現③WAYマネジメントの活動計画④WAY社内浸透ツールの設計・製作・活用・WAYブック、携帯ツール、ブランドブック、社内誌⑤WAY浸透研修:経営トップ、現場ごとのワークショップなどです。

 

SDGs経営戦略への転換

 

2030年時点で実現したい未来社会を想定し、SDGsの目標を実現できるようバックキャスティングを行い、自社の強みの技術やサービスにを活かしたビジネスモデル・イノベーションを構想して、それを実現するために資源配分と事業構造の組換えを大胆に行う必要があります。その流れとしては、①KPIによるモニタリングを行います。すなわち、現在の自社活動をSDGs及び社会課題解決度に照らし合わせながら、モニタリングを行います。②成長戦略への組込みを行います。すなわち、SDGsの主要目標を自社の成長戦略に反映し、社会課題を解決するイノベーションを起こすべく資源配分を行います。③長期イノベーション戦略を策定する。すなわち、2030年の社会を想定し、必要なイノベーションを定義し、そこに経営資源を大胆に配分するバックキャスティング、演繹法の考え方を採用します。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信