第15回SDGsの基本とビジネスへの関わり⓹

未来志向の企業経営に向けたSDGsの必要性

 

SDGsは、大企業のみならず中小企業こそが取り組み、国際的レベルで持続可能性を担保した企業経営ができるビジネスチャンスを秘めています。それは下記の通り幾つかの要点により導かれます。
①規模・業種・業態にかかわらず、どの企業においてもSDGsは不可欠であること。
②SDGsは短期事業目標ではなく、10年後以降にも企業の存続を目指す戦略的投資と考えるべきであること。

③SDGsは、10年後の未来を先取りした社会課題の解決に向けた、自社のビジョン(事業目標)、ターゲット(達成基準)、評価指標を設定できるヒント集として活用できる。
これに基づいた経営活動は、収益を上げつつ、社会貢献事業を実現することにつながりSDGsとCSVの両立、[共通価値=経済価値×社会価値]を意味する。

④上記に基づいた経営活動は、社会貢献事業に従事する社員のモチベーションを向上し、優秀な人材を確保することにつながり、就活学生に対するプロモーションにもなる。

⑤具体的にSDGs社内プロジェクトを第1歩として、「SDGコンパス」が参考になる。

  • SDGs社内プロジェクトを立ち上げ、自社の強みを生かした小さな成功を積み重ねる。

⑦本格的に、グローバルWAYマネジメントに挑戦する。すなわち、SDGs、ESG、CSVの3立を目指し、中・長期経営計画立案し、新規事業部門を立ち上げ、世界や社会そして顧客から評判の良い企業経営を目指す。

 

中小企業こそが持続可能なビジネスチャンス

 

先に述べたようにSDGsは中小企業にとってもビジネスチャンスです。その根拠は、SDGsの「包摂性」と「世界共通言語」にあり、中小企業こそトップダウンですぐにSDGsに取り組むことができます。

何度も説明している通り、SDGsでは地球・世界・社会で将来的に困っていることが、非常に広い分野で網羅されており、明確なSDGs目標とターゲットは、人々のからのニーズが裏打ちされているので、自社が率先して取り組むことでビジネスチャンスをつかむことができます。但し、CSVとののタイムラグがあり、直近の儲け話ではありません。あくまでも長期的な視野に立って持続可能な組織として活動して行くことが肝心です。

また、企業のみならず、すべての自治体、教育機関、団体に対しても、SDGsが提示する社会課題のテーマが満載されおり、もう一度強調するとSDGsの17の目標と、169のターゲットは、非常に広い分野が体系的に整理されています。企業にとって、世界共通言語としてのSDGsの意義とは一つ目は、SDGs 未来志向のビジョン、二つ目は、SDGs 社会貢献企業としてのブランディングと世界発信力にあります。

 

SDGsは企業の存続を目指す戦略的投資

 

SDGsを語る時よく出る質問で「SDGsに取り組むと儲かるのか?」があります。結論から言って、それは短期的には期待できません。SDGsは、10年後以降にも企業の存続を目指す戦略的投資と考えるべきです。つまり、10年後、20年後に、自社の存在意義を社会や社員に認めてもらって、社会に役立つ企業になりたいかという、経営者がその判断をすべきものです。なお、事業ミックスとして、現状の収益事業の成長戦略と、未来に向けたSDGsの戦略的投資をできる範囲でよいので組み合わせることが肝要です。今までは自社独自【我流】に経営理念やビジョンを立てていたものから、自社ビジョン(未来の方針と到達目標)をSDGsの持続可能な目標とターゲットに具体的に対応づけます。つまり、SDGsを志向した自社ビジョンを再構築することがポイントです。また、中期・長期事業計画の立案時にも、それぞれ目標に対応している169のターゲットの中から該当するものを選定し、そのターゲットに合った指標で構築して行きます。
前述のことができれば、中小企業でも、さらにベンチャー企業でも、世界に通用する持続可能な企業経営を目指せるチャンスが生み出せます。実際に、日本の表彰制度として始まった「SDGsアワード」の中には、大企業のみならず、中小企業、小規模な自治体、教育機関でのSDGs活動が優秀と認められ表彰されています。

 

SDGs社内プロジェクトの第1歩「SDGコンパス」

 

2015年末に、国連グローバル・コンパクト企業のサステナビリティ報告のガイドラインを策定している非営利団体GRI(Global Reporting Initiative)、そしてスイスに本部を置くWBCSD(持続可能な開発に関する世界経済人会議)の協議により、「SDGコンパス(SDG Compass)」が発行されました。「SDGコンパス」は、SDGsを経営に統合するための5つのステップを提唱しています。ここでは各ステップの内容と補足を記します。

STEP1:SDGsを理解する。

【内容】

SDGsとは何かを紹介し、なぜSDGsに企業が取り組むべきかの責任や理論根拠を紹介しています。内容は、・将来的なビジネスチャンスの見極め・企業のサステナビリティ経営の価値補強・ステークホルダーとの関係強化・新たな政策展開との歩調合せ・社会と市場の安定化・共通言語と共通の目的としての活用。

【補足】

SDGsによる社会課題把握と、社内共通認識の醸成。「理解」とは、ただ単にSDGsの内容の把握ではなく、企業にとってなぜ取り組むことが重要であるかの理解を含む。

STEP2:優先課題を決定する。

【内容】

バリューチェーンのマッピングをベースに、正と負の影響を明らかにし、自社として優先的に取り組むべき領域(指標)を特定する。

*補足

SDGsの重要課題の抽出。サプライチェーンではなく、価値が実際に生まれるビジネスの下流を含むバリューチェーン全体を俯瞰することが重要。

STEP3:目標を設定する。

【内容】

STEP2で特定した優先課題に対する具体的な達成目標(KPI)を設定する。

*補足

SDGsに関する目標設定と進捗管理。目標設定においては、自社都合や自前主義によるインサイド・アウト・アプローチより、世界的・社会的ニーズから導き出せるアウトサイド・
イン・アプローチ*を喚起する。

STEP4:経営へ統合する。

【内容】

CEOや幹部層のリーダシップの下、SDGsを着実に企業活動に定着・統合させ、すべての部門に組み込むことが重要。

*補足

経営戦略の構築と経営資源配分。専門部署に留まっていては戦略的な行動を生み出せない。バリューチェーンにおける連携、自社業界でのイニシアティブ、外部ステークホルダーとのパートナーシップも経営への統合の一つの手段として重要。

STEP5:成果を報告しコミュニケーションする。

【内容】

ステークホルダーのニーズを理解し、それらに適切に応えるために、サステナビリティ報告書の一環としてSDGsの取組みの進捗についてコミュニケーションを図る。

*補足

SDGsを活用した発信。第一にコミュニケーションは双方向のものであるべきと指摘していて、第二に信頼醸成、そして社内の意思決定の促進のためにコミュニケーションが重要です。単純な「報告書発行」が目的でないことに留意すること。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信