第10回:新たな時代を迎えて

あけましておめでとうございます。国内でコロナの感染が報告されてから1年が経とうとしています。その間、経済や私たちの生活様式も大きく変わってきました。このコラムも昨年まではこれからの小売流通業の将来についてさまざまな提言を行ってきましたが、今年からは小売流通業のみならず、コロナ禍で未曽有の経験をしている時にこそあらゆる産業や分野において考え、実践して頂くことを前提にマーケティングの分野を中心としてネットとリアルの融合を意味するOMO(Online merges with Offline)を広義に捉えて根底に捉えてDX(デジタルトラスフォーメーション)やSDGsの話題なども交えて提言を行って参ります。

本年はこれらを参考として、読者の方々がそれぞれの企業や団体において取り組むヒントとなれば幸いです。

 

歴史から学ぶ変化対応

 

 今から100年前、スペイン風邪により現在と同様、世界的に蔓延して多くの感染者とえて死者を出したと報告されています。当時の医療体制と現在の状況に違いはありますが、今回の状況と類似していることがありました。未知なるウィルスに対して人々は日常生活においては外出の自粛や日々マスクの着用、手洗いの徹底など生活様式に変化をもたらし、商店の休業、学校の休校、イベントの自粛や中止がされるなど現在と似ている状況にあった一方、経済の状況においては、最初に感染の波がやって来た当初は株価の上昇局面にありましたが、爆発的な感染と同時に株価も下落してその後不況の時代に突入しました。現在の状況と照らし合わしてみると、世界の株価や金相場の状況からみて上昇傾向にあり実態経済との乖離が危惧されるところもあります。当時の生産活動を見ると多くの人の感染死亡により労働力の低下が起こると同時に、今までの生産性を維持するために手工的作業から工業化が進められました。

このような状況と照らし合わせみると、現在はITの活用や最近言われているDX(デジタルトランスフォーメーション)、輸送手段の発達などにより世界が近くなりましたが当時の状況と共通点が多く見られ、危機的な状況において対応する為にさまざまな取り組みがされてきていることもしかりです。

 

新時代のコンセプト

 

世界全体がコロナ禍におかれている中で、感染拡大が収まれば従来同様の状況に戻るとの意見もありますが、生活行動や経済の慣性力が止められたこの1年を振り返っても人々の生活様式も変わり、リモートワークやDXの取り組みが進められている今日の状況からしてみてコロナ禍以前の状況の延長長でそのまま戻るとは考えにくく、むしろ今後のニューノーマルな生活様式を踏まえた新たな考えに基づいた取り組みを進めていくことが重要です。そこでそのフレームワークのコンセプトとして下記の4点のキーワードを基に各業界や企業が取り組む必要があると考えます。

 

1.Creative(創造)

全てのものごとの起点は創造や想像することから始まります。それは今までの知見、経験は無論のこと、将来を見据え現状やこれから起こりうることを想定して世の中のニーズに合うサービスや商品を開発して行きます。まだ社会実装されていない創造や想像を考えていくことも重要ですが、既に他の業界や事象で取り組んでいることを参考に、自社でも取り組めることがあれば検討してください。

2.Realize(実現させる)

創造的な構想を描いたものは、単に絵に描いた餅に終わらせないためには経済状況や業界、ベンチマークしている事柄をマクロな観点で詰めて行くことと、社内の状況や現場からの声を拾いそれを反映していく必要があります。いわば、鳥の目と虫の目で相互に見て行き整合性を取っていきます。イメージとしては初めにGoogle Earthで地球を見ていたものが、拡大していくと次第に地上に近づいていき、最後にはストリートビューで街中まで降りて行き、建物や道などの細かいところが見えてくることに似ています。

3.Empathize(共感)

実現されるために描いたことは、個人、部署内でとどまっているだけではプロジェクトとしては先に進みません。そこで周りを巻き込んで行くためには、描いたものを相手が同じイメージとして共有できることが必要です。当事者が伝えようとしていることが十分に理解されていない、取り違えて理解されている場合も多々見受けられますがここで重要なのは単に理解されるだけではなく、それを超えて同調、共感してもらうことに注力します。

4.Sustinable(持続可能)

昨今では、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されています。以前にもまして将来や次世代の社会的要求を損なうことなく現在の活動を進めていくことの必要性が求められていることから自社の存在価値を再定義して開発目標に沿った活動を行うことにより企業として存続することを考える必要があります。SDGsは17のグローバル目標の下に169のターゲット(達成基準)と、それらに対応した232の指標があり将来「SDGsへの対応が取引条件になる」と指摘されています。

これら4つのキーワードは単独で考えて行くことも可能ですが、連携したサイクルとして捉えてさらに高度な次元に発展させていくことが望まれます。

OMOとDXがこれからは必須の時代

 

コロナ禍によりオンラインでの活動が益々重要視される時代に突入した現在、全ての企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)は必須となってきました。ここで押さえておきたいことは従来の業務を単にDX化することが目的ではなく、業務やサービスを改変して更に創造的で豊かな工夫が施されていることが重要です。身近なところでは、社内業務や取引先とのやり取りでオンラインサービスを利用する場面も多くなりましたが、以前であれば多人数で会議をする場合では、会議室を押さえ全員が同一の場所に集まることが求められ、そのためにそれぞれのスケジュールを調整する必要がありましたが、オンライン会議を取り入れることにより、もはや場所的な制約を受けることや移動の時間を考慮する必要もなくなりました。今までその為に要していた時間を他の業務に振り分けることが可能となった他、オンライン上での対面とSlackやLineなどのコミュニケーションツールを平行して利用することで議事録のまとめや決済方法も変わろうとしています。それに加えて実際に対面する時には、オンラインでのやり取りを引き継いで詳細なニュアンスをやりとりするコミュニケーションに注力できるようになり、まさしくネットとリアルの融合OMOとして一筋のつながりを持ってものごとを進められ、生産性や効率のみではなく、更に強い連携が可能となります。

フィルゲート株式会社 代表取締役 菊原政信