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【コラム】生き残りをかけた書店のO2O・オムニチャンネルマーケティング(前編)O2O・オムニチャネルマーケティングコンサルティングのフィルゲート

category : What's New, コラム 2014.5.7 

1999年から2013年の15年間で8,000軒以上の書店が減少し、2015年には実店舗として10,000軒前後になると予想されている書店業界。電子書店、電子書籍の伸びを横目に、このまま衰退してしまうのでしょうか?

リアルな書店としては、延床面積を広く持ち、品揃え豊富な書店だけが生き残るのか、中小ならではの策があるのか、書店業界とIT化、電子書籍の市場動向、紙本・電子書籍端末の利用評価、O2O・オムニチャンネル等の観点から前編・後編で考察します。

書店とIT化のはじまり

今でこそPOSシステムは珍しくありませんが、日本の流通業界では1978年JANコードの制定により1980年前半より本格的に導入され始めました。
図書の分野においては、世界共通で図書を特定するための番号ISBNコードは、1981年に国際的な枠組みに加盟したことに始まり、1988年にJIS規格となり雑誌コードは、1986年にJANコード体系に割り付けられ共通雑誌コードとなりました。
その後、書店としては紀伊國屋書店が1994年にPOSシステムを導入開始し、翌年頃から各社がインターネットへの取り組みとしてホームページを開設し始め、1996年に日本国内の本格的なオンラインブックストアとして 「紀伊國屋書店BookWeb」が立ち上がりました。
因みに、オンライン書店のアマゾンが日本に上陸したのが2000年11月です。
筆者が理事を務めるEC研究会が、毎年主催している「オンラインショッピング大賞」の第1回(1997年)では「紀伊國屋書店BookWeb」及び日本初の電子書籍販売の電子書店パピレスが奨励賞を受賞、既にこの時期からネットでの紙本、電子書籍の販売は開始されていたのです。

映画化までされる「本屋大賞作品」はリアルな書店がなければ生まれない

先月、2014年の本屋大賞として『村上海賊の娘』和田竜(新潮社)が受賞されました。

「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。(NPO本屋大賞実行委員会HPより抜粋)

毎年恒例となったこのイベントの発起人であり、推進役を務められている株式会社博報堂ケトル 代表取締役嶋 浩一郎氏によれば、
出版不況が深刻化していた2004年当時、「自分だったら直木賞にこれを選ぶのに」と思っている書店員がたくさんいることに気づいた。文芸書の賞は、作家や評論家が選ぶことが慣例になってるが、「書店員が選ぶ賞があっても良いのでは」と思い本屋大賞の設立を考えられた。
賞がメディアで取り上げられて、注目を集めることによって、書店員が誇りを持って積極的に本を売ろうという状況が生まれる。書店員のやる気と努力によって、本屋大賞の知名度は上がり、ベストセラーを生みだす結果となったと語っています。
このようにリアルな書店があってこそ生まれできたのです。

書店にとって電子書籍は本当に脅威になっているのか?

2010年が電子書籍元年と言われいますが、電子書籍の歴史を遡ると1990年ソニーが電子ブックプレーヤーの第一号機(DD-1)を発売し、辞書が一冊まるごと1枚のCDに収まることを謳い文句に販売されました。1992年世界初のフルコンテンツタイプの電子辞書「TR700」(研究社『新英和・新和英中辞典』の二冊の中身を丸ごと収録)が人気になり徐々に普及し始め、2007年のピーク時には年間281万台出荷され、463億円の規模となりました。

左:SONY製 DD-1 右:SII製 TR700

電子ブック出荷台数の推移

出典:一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会まとめ

 電子書籍普及のカギを握るのはリアルな書店

2010年は「電子書籍元年」と言われ、以降スマートフォンをはじめ、ipad、Kindle、Kobo、Lideo等のデバイスも揃い、普及及に向けた動きが加速していますが、今後乗り越えなければならない壁としてコンテンツの品揃え、使い勝手など要因は幾つかある中、最も大きな理由は、消費者が日頃接しているリアルな書店を取り込んだシステムが十分に機能していないことです。

                        電子書籍市場規模の推移

 昨年10月に行われたインターネットコムとgooリサーチの調査によれば、2010年から3年経ち紙の本をおびやかすほど電子書籍が普及しているかと言えば、必ずしもそうではありません。
2011年10月には「電子書籍に関心がある」人の割合が約65%であったのに対して、2013年10月には「関心がある」人の割合が約54%に低下してます。

電子書籍を「読みたくない」主な理由としては・・・

・「紙の書籍・雑誌の方が好き」が42.5%
・「画面では読みにくい」42.1%
「紙の書籍・雑誌で十分満足」35.2%
・「価格が高い」15.9%
*全国のネットユーザー約1000名を対象 複数回答

「辞書は書店で購入するもの」だった辞書も「電子」の取り込みに書店側が慎重だった為、その後電子辞書は家電量販店で購入するものと消費者の意識に根付いてしまいました。その時の教訓を活かし、紙本と電子書籍が併売される試みも始まっています。

電子書籍端末は紙を代替できるか? 

電子書籍を読むためには何らかの電子デバイスを必要としますが、2012年に富士ゼロックスが行った、「電子書籍端末の評価実験」について幾つか紹介します。この実験では、電子書籍端末が紙の書籍の読みやすさにどれくらい迫っているのかを読みのパフォーマンス(読書速度、理解度、校正読みでのエラー検出率など)の観点から評価した一連の実験結果として公表されてています。

                           実験 1:読みのスピードの比較

【結 果】
片手を画面上で横にスライドさせる「スワイプ」と、画面の端を軽く叩く「タップ」と呼ばれるページめくりで差がでる。

実験 2:答えを探す読み

【結 果】
紙の書籍では多くの被験者が目次の位置に指を挟んで目的のページにアクセスしていたため、目次の位置に簡単に戻ることができた。紙の書籍は状況に応じた臨機応変な対応を可能にしていることがわかる。

実験 3:意味的な校正をする読みにおける文書タッチの効果

【結 果】
普段、ほとんど無意識に行っている文書に「触る」というインタラクション(文書タッチ)は、文書を理解するうえで重要な役割を担っているのではないかと考えるようになった。

実験での被験者のコメントから、文書タッチには以下のような効果があることが示唆される。
●指やペンを特定の位置に置くことで視線の移動がしやすくなり、異なる箇所を比較しやすくなる。
● テキストを指でなぞりながら読むことで、読むスピードを制御し、読み飛ばしを防ぐことができる。
● 注意を指先(あるいはペン先)に向け、確認したり、記憶を強めたりできる。
●文書に触れることで、作業に集中でき、文書に入り込んで作業でき、文書に親しみを感じるようになる。
*逆に文書に触れない条件では、「もどかしい」「(文書との)距離感を感じてしまう」「掲示板を見ているような感じになる」という報告がなされた。

*評価に使用されたデバイスは2012年時点で販売されていたものです。

後編では書店業界でのO2Oの取り組み実例等を取り上げていきます。

配信:O2O・オムニチャンネルコンサルティング フィルゲート 菊原政信
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